ことのあらまし

日々のあらまし、いつか平気になるための記録

2023/9/10

朝はお茶漬けと納豆。昼は冷やし担々素麺。白色のスープに緑の小ネギをちらして赤のラー油を回しかけたら一気に料理めいた。思い描く担々麺の見た目も味も再現できて感心する。あの味ってこうやってできているんだ、と手品の種明かしをされた気分。焼くのではなく茹でるとしつこい洗い物が少なくっていい。

やることなら溜まっているけど向き合う気力が湧かなくて台所に立つ時間が延びる。甘い匂いに包まれたらがんばれるかもしれない、と思い立ち、バナナケーキを焼く。窓ガラスからさんさんと陽が差し込みバターがすぐに汗をかいた。粉をふるいにかけて材料を練り混ぜたら型に流し込んでオーブンへ。ぷこぷこと山脈のように背中を盛り上げる生地を180度の橙の中に見つめる。スイッチを押したらあとは待つだけ、の時間が好きだ。オーブンにしろお湯はりにしろ洗濯にしろ。小さな約束がきっちり果たされていくことにうれしさを覚える。

眠たくってしょうがなくって少し寝る。ひと仕事を終えてこれからジムへ行くという同居人にケーキの味見を提案し、1切れずつ皿に並べる。ほうじ茶が入っていることは言われないとわからない程度だけれど、たしかにしっとりと深みがある味だ。てっぺんに乗っけたバナナからじんわりと溢れた水気が、焼く直前に回しかけたはちみつと合わさり、とろりと艶めいている。

仮眠を取ったのもあって現実逃避の気持ちは少し和らいだ。やはりじゅうぶんに健康か、もしくは不調を押しのけるほど強い熱量がないと、頭を使ってひねり出すことは難しい。元気なときの心や体のリズムを覚えておこう。日記も書ける日に書いておく。