ことのあらまし

日々のあらまし、いつか平気になるための記録

2023/9/30

小林賢太郎『僕がコントや演劇のために考えていること』を読む。

「芸術は常に寄り添っている。僕から生み出される価値は、僕から遠ざかっていくことは絶対にない」とか「酔ったサラリーマンが飛ばすヤジのような無邪気な悪口が現れたら、そんなものは置き去りにして、自分はどんどん先へ行く」とか「結局すべては、巧妙に仕組まれた小林賢太郎になるための行程だった」とかといった記述に、彼の芸に対するプライドや覚悟がしっかり表れていて、なんだかうれしくなった。

自分が生み出すものや生み出す自分に誇りと自負を抱きながら、それらがけっして万能でないことにも自覚的でありつつ、ストイックにかつ楽しみながら先へ先へと進みつづける表現者たちの姿を目の当たりにすると、やはり胸打たれるものがある。

古い商店街に降りていく階段の脇にある小綺麗な焼き菓子屋で試しに買ってみたカヌレは、むっちりと中身が詰まっていておいしかった。同居人がついさっき手に入れてきた新しいマグカップにコーヒーを注いで一緒にいただく。白銀に包まれた底が空にぽっかり浮かぶ満月のように丸く揺らめき輝いていた。

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