ことのあらまし

日々のあらまし、いつか平気になるための記録

読書

2024/4/16

かなしいというよりは悔しくて、流れる雫にほおが濡れる。逃げ場とやり場のない感情を持て余している。朝方は大丈夫に思えていたけれどそんなこともなかった。頭痛がおさまらなくて休む。 地域の祭りでも開かれているのか、通りから囃子が聞こえる。初夏のよ…

2024/3/31

朝6時にすっと目覚めて心地いい。昨日に引き続きの晴天をベランダから確認していそいそと洗濯機を回す。 友人の結婚式に向かう同居人を玄関で見送って読書にふける。真昼の陽気で部屋の隅まであたたかく、汗が滲むほど。網戸から吹き込むささやかな風を受け…

2024/3/28

できない自分を真正面から見つめるのを恐れていそう、と言われ、この人は私をよく見ているな、ほんの3ヶ月で、と思う。本棚の中でくたびれていた太宰治『人間失格』を手に取る。カビが生えそうなほど湿気を含んだ文に、頬を撫ぜられる心地がした。 www.shinc…

2024/3/24

小鍋を傾ける手元が狂ってテーブルから椅子の上のクッションまでどろりとした白濁の砂糖液で濡らす。まばたきひとつせず壁を見つめて菩薩のように薄く笑う、よく知った人の横顔が目に焼き付く。また間に合わない夢を見た。 カリカリになるまで炒めた細切りの…

2024/3/23

雨が止むのを待って外へ。もう夕方に差し掛かっているからか、商店街の人だかりはいつもの週末ほどではなく、メンチカツ屋に並ぶ列も4、5人におさまっている。この調子ならあそこも静かだろうと見越して向かった喫茶は予想通りの貸切で、チャイと苺大福をい…

2024/3/17

春服を物色しようと高円寺へ。昼食後の飲み物を求めてキタコレビルに向かう。ビニールでできた暖簾をくぐると2畳に満たない手狭なカウンターにオレンジ色のパーマの女性をみとめた。 マサラチャイを頼む間、吹き抜けを見上げる。時刻は12時過ぎ。工事現場じ…

2024/3/13

阿波野巧也『ビギナーズラック』を読み終える。三十一文字という箱におさまりながらも57577の区切りをするりと追い越していく様を、間近にというよりは液晶越しに眺める心地でページをめくった。指先でなぞり上げた画面に映る誰かの日常みたいに、歌に織られ…

2024/2/15–18

2024/2/15 咳き込む頻度が増して肺のあたりの筋肉や骨に負荷がかかっている。鼻をかみすぎて肌が荒れてきたし耳も頭もボーッとする。でも熱が出ていたときほど意識に霞がかかる感覚は薄れてきた。寝ては起き、ドロヘドロを読んではまた寝る。元気になったら…

2024/1/7

今日も晴れ。天気がいいから散歩がしたくて駅を越えて10分ばかり歩いたところにある中華料理屋までお昼に向かう。いつもの坦々麺をきっちり平らげて水餃子を同居人と半分こに。しばらくやさしい味つけのものを少量食べる生活をしていた病み上がりの体にはち…

2023/12/22

プレゼントは背景含めてのプレゼントだと思うので、と送ってくれたメッセージを読み返しながら、包装をひとつずつ解いてじっくりと手のひらに眺める。 Wi-Fiの調子がわるく電源を抜いたり差したりパスワードを入れ直したりとしているうちになんとか解消。つ…

2023/12/16

この家は窓が大きくて日がきれいに差し込む。背中に陽光を受けながらアコギを弾く同居人の影がきれいで思わずカメラを構えた。あと何年ここに住むかはわからないけれど、ずっとではないことはたしかだから、離れたあともこうやって暮らしていたことを思い出…

2023/12/14

同居人との共有口座を作るべくあれこれ調べて申請。10分足らずで審査が完了して驚く。どんな物差しで測られているかわからないままに、何らかの基準をクリアはしているらしいという不確かな承認を得て覚える居心地のわるさを手のひらの上に持て余しつつ、と…

2023/11/21

技術書展のオンラインマーケットで買ったmochikoAsTechさんの「届ける工夫 ~欲しい誰かに見つけてもらえる60の方法~」を読む。 mochikoastech.hatenablog.com 人はできあがったものそのもの以上にそれがそうなるまでの物語に惹かれる、という話や、人は選…

2023/11/3

山崎ナオコーラ『長い終わりが始まる』を読み終える。不誠実で身勝手にすら見える人間と、そんな人間に憧憬や執着を抱かざるを得ない人間との関係性が、交差するように描かれていた。なんと狭く奥まった世界に生きているのかと、他人からすれば思えるような…

2023/10/31

やるべきことをやれないまま焦りだけが募っていく。紡ぐべき言葉を紡げないまま時間だけが過ぎていく。でもやれば終わるとは知っている。やりはじめればなんとかなるともわかっている。だからやるしかないし、やることが一番の近道だ。 何一つ手につかないよ…

2023/10/30

掛け布団を引き剥がして半身を持ち上げる。細く開けた窓から吹き込むひやりとした朝の空気に顔を晒す。まだぼんやりと火照ってはいるものの、少しすれば落ち着きそうだ。大事をとって仕事は休む。今日はゆっくり過ごす。 喫茶店でたまごサンドとアイスコーヒ…

2023/10/15

祐天寺にあるfoufouの実店舗へ。いくつか試着させてもらい、ネイビーのコインポケットストレートパンツを購入。きゅっとタイトな足首とベルト周りのシルエットに胸が踊る。 寒くなるとパンツを履く機会が増えるから、これにちょっとヒールのある黒のパンプス…

2023/10/12

小谷野敦『とちおとめのババロア』を読み終える。表題作のテーマには興味を惹かれたがそれきりで、他の話もあまり自分には合わなかった。 主人公の目線や語りに自己投影なり共感なりがあまりにできないと、飲み屋などで他人の話を聞くともなしに聞いているよ…

2023/10/6

スマホが手のひらに重たく沈む。そう感じるくらいにつかれきっている。 肌の表面にこまかく並ぶ穴という穴に塵だか水滴だかをねじ込まれたかのように体の中に気が淀んでぼわぼわと息苦しい。逃げるようにその場から立ち去って薄明るい空間で西川美和『その日…

2023/10/4

息をつく。スリープモードの真っ黒な画面の奥を天を仰ぐような心地で見つめる。hPaの変動を首筋にのしかかる重たさから感じ取る。 没頭していたい。脇目も振らず打ち込める何かを与えてほしい。手持ち無沙汰だとわるい想像ばかり働いてしまう。どれだけ気を…

2023/9/30

小林賢太郎『僕がコントや演劇のために考えていること』を読む。 「芸術は常に寄り添っている。僕から生み出される価値は、僕から遠ざかっていくことは絶対にない」とか「酔ったサラリーマンが飛ばすヤジのような無邪気な悪口が現れたら、そんなものは置き去…

2023/9/25

秋晴れ。窓を軽く開けて風を部屋に招き入れる。 素麺を買うのを忘れたまま鶏胸肉1kgを抱えて帰る。きのこを入れるのを忘れたまま参鶏湯風の炊き込みご飯を仕上げる。肉の出汁がよく染みていておいしかった。しょうがペーストを使い切った。 小嶋陽太郎『友情…

2023/9/18

現実的な締切を考えると今日の昼過ぎまでにはケリをつけておかないといけないのに筆は遅々として進まない。散々ちんたら寄り道して想定の5倍以上も時間をかけたくせに最後はほとんど投げやりに終わった。責任も後悔も背負うのは我が身だが、だからこそどうで…

2023/9/14

仕事がひと段落したところでセミナーの視聴まで1時間ほど空いた。昨日につづいて息抜きに霊園を歩く。 駅の向こうまで跨線橋を渡り、コンクリートの階段をあがって墓石が並ぶ一画を進む。ロータリーの付近はチェーンの居酒屋とファストフード店の安い酒と油…

2023/9/9

観光客や地元の人で賑わう通りから横に一本逸れると、三方を木々に囲われた数畳ほどの一画に、石造りの鳥居がすっと佇んでいる。大人1人がようやく入れる程度のこじんまりとした空間には、祠や手水舎、灯籠が厳かに構えている。あいにく縄が張られていて近く…

2023/9/7

今何もしてないな、とモニターを見つめながらふと気づき、だけど職場にいる以上はこの時間も仕事として換算されるのか、と考え、果たしてそうだっけ、と首を傾げる。 出社する日は自宅にいる日よりも働いているかどうかの定義がゆるくなる感覚がある。家にい…

2023/9/2

陽光に照らされて白く反射する町並みが、車窓の向こうを左から右に流れていく。通り過ぎる風景を視界の端に捉えながらする読書が一番捗る。川上弘美『神様 2011』と宮沢賢治『よだかの星』を読んだ。 横浜のNEWoManで元同居人である友人とランチ。フォカッチ…

2023/9/1

日記本を買ってくださった方からメッセージをいただいた。目を通す他人や読み返す自分に思いを馳せながら、地道な日々の記録を日記という形式の作品として大切に扱おうとしていることを、気づいてくれる人がいてうれしい。大事に読みますね、と言ってもらえ…

2023/8/19

2冊目の日記集の推敲を進めていたら再版分の1冊目の日記集が届いた。ぴしりと揃って山となっている背表紙を目でなぞる。またいろんな人の手元に渡っていくことが楽しみだ。 せっかくだから宣材写真も撮りなおすことにした。ベランダから隣のお屋敷の屋根瓦や…

2023/8/13

友人たちがやっているラジオの書き起こし冊子『Magazine Nude vol.I』を読み終える。日常に潜むささいな概念や哲学を、拾い上げては転がして遊ぶ彼らの軽妙なトークに触れるたび、もっと本を読みたくなるし、もっと世の中を知りたくなる。そう感じさせるよう…