ことのあらまし

日々のあらまし、いつか平気になるための記録

2024/3/24

小鍋を傾ける手元が狂ってテーブルから椅子の上のクッションまでどろりとした白濁の砂糖液で濡らす。まばたきひとつせず壁を見つめて菩薩のように薄く笑う、よく知った人の横顔が目に焼き付く。また間に合わない夢を見た。

カリカリになるまで炒めた細切りのベーコンが散るフライパンにトマト缶を空けて煮込み、固茹でにしたパスタを落として和える。片方の皿に1人前、もう片方の皿に2人前相当の量を盛り、胃腸の調子が戻ってきた同居人と食卓を囲む。ベランダや寝室だけでなくダイニングにも窓があればと思う。そうすれば湯気がもっとよく光るから。

よしもとばなな『はーばーらいと』を読み始めて読み終える。ことさら居た堪れなかった頃の自分にまつわる記憶が呼び起こされて生ぬるい汗がにじむよう。たまらなくなって窓を開け、風を頬に受けた。なかったことにしたい。他人だったと言いきりたい。そんな過去の出来事を、誰もがすっかり忘れてほしい。

銭湯から出てランドリーの仕上がりを待ちながらナタデココ入りのぶどうジュースを飲み干す。微炭酸が湯上がりの体に染み渡っていくのを自販機の光のふもとで味わう。2度と目にできないものは綺麗だ。もう呼ばれることのない名を思い出した。