ことのあらまし

日々のあらまし、いつか平気になるための記録

2024/3/31

朝6時にすっと目覚めて心地いい。昨日に引き続きの晴天をベランダから確認していそいそと洗濯機を回す。

友人の結婚式に向かう同居人を玄関で見送って読書にふける。真昼の陽気で部屋の隅まであたたかく、汗が滲むほど。網戸から吹き込むささやかな風を受けながらベッドに転がって薄い文庫をめくる日曜は、限りなく理想に近い。昼寝を挟みつつ『人間失格』を読み終えて17時。太宰治の文体は時代が移ろっても古びることなく読みやすいなと改めて。

昨日手に入れた黒のボトムにしばらく前に買ったグレーのブルゾンを合わせて外へ。水に溶かした墨のように少しずつ夜が染み渡る上野公園を進む。花見客はめいめいのブルーシートの上でまだ名残惜しそうに歓談を続けていて、臨時で増設されたゴミ箱の上では地域の商店の名前が書かれた提灯が灯されていた。照らされる白い花弁にスマホのレンズを向ける人々とぶつからないようにしながら道を行く。

高架下を抜け大通りを脇に逸れてさらに一本入ったところに目当てのギャラリーはあった。店の奥のほそい階段を降りると低い天井に塞がれた炭鉱のように黒い空間が待ち受け、その四方には淡く照らされた小さな写真たちが白い額に納められて静かに整列している。

写真家、井崎竜太朗さんの個展を観るのはこれで2度目だ。数年前に原宿でなされたそれは大判に刷られた作品が目立つコントラストの強い展示だったが、今回の『WHITE SPACE』は日々への慈しみや愛おしさを素直に綴ったような穏やかなものだった。光はいくら重ねても光のままで、重たさも嵩も増すことはないはずだが、それでも層のように積もるのかもしれない。胸のうちであれば。