ことのあらまし

日々のあらまし、いつか平気になるための記録

2024/2/11

ホテルのカーテンを開けると朝日に照らされた山々を背に雪がちらついている。まぶしさに目を細め、息をふと吐き、昨夜のお酒が体に残っていないことにホッとした。同居人と3対1くらいの割合で分け合いながら飲んだとはいえ、4合も頼んだからヒヤヒヤしていたのだ。くどき上手、初孫、出羽桜、あら玉。どれもよかった。北の地で飲む日本酒はやはり格別。

チェックアウトを済ませコーヒーで暖を取りながら雪が舞う中を歩く。口に入れた瞬間銃に撃たれたような衝撃を覚える、何時間だって並ぶ価値のある東北きってのラーメン屋、と同居人が熱弁するお店は大通りから一、二本逸れた場所にぽんと存在した。本を一章読み終えるくらいには待つかと覚悟していたが30分も経たずに順番になってテーブルに着く。程なくして供されたエビ味噌ラーメンはたしかにおいしかった。旨みの層がいくつも重なり、鳴り止まないメロディのように味わいが何度も押し寄せてくる。一心に鉢に向き合っていた同居人は、やりきった顔をしていた。

茶店でひとやすみをしてバスで駅前まで向かい文翔館へ。天井や壁紙、柱や床など、もともと使われていた資材をできる限り活用して復元したという豪奢で厚みのある建物の中を観て回る。こんなにも細密な意匠が施された空間の中でよく昔の公務員は働けていたものだ。時計塔からは目の前につづく通りをまっすぐに見渡せた。

夕方の色合いを含みはじめた空と雲と山を名残惜しく眺めながら帰り道を歩く。手が届くわけもない遠くて大きな景色を、なるべくなら毎日目にしていたい。