ことのあらまし

日々のあらまし、いつか平気になるための記録

2023/11/3

山崎ナオコーラ『長い終わりが始まる』を読み終える。不誠実で身勝手にすら見える人間と、そんな人間に憧憬や執着を抱かざるを得ない人間との関係性が、交差するように描かれていた。なんと狭く奥まった世界に生きているのかと、他人からすれば思えるような渦中に、各々がしかし死にものぐるいであることを、物語はよく思い出させてくれる。

ときわ台まで足を伸ばし、気になっていたお店、本屋イトマイに向かう。扉を開けて階段を上がり、小さな街の建物のようにぎゅうと並び立つ本棚と、そこで誇らしげに胸を張る表紙たちを目にした瞬間、体の中を涼やかな風が吹き抜けていった。いい書店に行くと、どれだけの本が山となっていようが、目の前がぱっと開けた心地がする。

芋のバスクチーズケーキと中煎りのブレンドをいただきながら、水野学『センスは知識からはじまる』を読み進める。見届けたい世界やつくりたいものに、ほんのちょっとでもいいから今日一日の間にだってたしかに近づけていると実感したい。知ることはかつては怖くさみしいことだった。今ではすべてが礎になると思えている。