映画『怪物』を観る。映画館で観ることができてよかった。海と山が見える開けた高台に登りたくなった。以下、ややネタバレを含む感想の雑記。
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憎しみや恨みより保身や愛を起点にした隠し事の方が、雪だるまみたいに膨れ上がってどうしようもならなくなる。血が繋がった家族であるかと、信頼がおける関係であるかと、嘘偽りなく本当を話せるかとは、まったくイコールでもない。
好きだけど好きだからどこまでも隠さないといけない。それなのに相手のことも自分のことも満足に守りきれない。だから苛立たしい。誰よりも自分が。
生きたくないわけじゃない。正しく生きたいだけ。正しく愛したいだけ。正しく守りたいだけ。それでもこのままの今をつづけることは耐え難い。どうにもならないことばかり積み重なって泥沼のように足元がどんどん黒く濁って重たくなっていく。
きっとこの生が誤っていた。生まれ落ちた瞬間から自分は間違っていた。だからこんなことになって、もう取り返しがつかないんだ。なかったことにしたい。最初からやり直したい。きれいで正しく大丈夫な命になりたい。
だから「生まれ変わりたい」。そう聞こえた。