ことのあらまし

日々のあらまし、いつか平気になるための記録

2024/4/9

知り合いかも、とアプリに薦められたアカウントのアイコンにぽつと触れると、華やかな白衣装に包まれた新婦とその隣で背広を着てはにかむ新郎の姿が目に入った。半年前に撮られたらしい写真たちを軽く眺め、フォローはせずにホームに戻る。何杯も水を足してにおいもしないほど薄めたはずの記憶に、色が戻ってくるようで首を横に振る。

海に投げた小石のように、空に飛ばした風船のように、本当はまだどこかにあるとしたってもう消えたのだと言って差し支えないものとして、過去は過去だとまぶたを閉じたい。今は今を生きるのに必死だし、すべてを覚えているのにもつかれた。彼も彼女も好きに生きていることだろう。それなら私も。

釜の蓋を開ければ縁までいっぱいに敷き詰められた米の上にキラキラと水気を含んだブリの切り身が横たわっていて誇らしげだ。骨を抜いてしゃもじで切るようにほぐす。塩気を含んだあまい香りがふわりと立ちのぼって鼻腔を湿らす。湯気を浴びる先から大丈夫になっていく気がした。