ことのあらまし

日々のあらまし、いつか平気になるための記録

2024/4/28

麻布台ヒルズは初めてだ。ビルに入っているお店それ自体がショーケースみたいにピカピカと輝いていてまぶしい。ジュエリーのように焼き菓子が、香水のようにコーヒー豆が、すました顔で並べられている脇をきょろきょろと見渡しながら横切る。

Aちゃんと落ち合い、パンとコーヒーを調達したら芝公園まで。雲ひとつない青空を、東京タワーの赤がまっすぐに切り割いている。熱に満ち満ちた日差しに首筋を射抜かれて、日焼け止めを塗ってきてよかったと心底思う。

草木の影から伸びる平たい階段を上がると淡色のバラに囲まれた広場があり、テントやシートを持ち寄った人々が各々にくつろいでいた。港区にも探せば緑や花や憩いの場があるもんだ。真横にタワマンがそびえ立ってはいるが。

日陰になっているベンチのひとつを選んで腰掛ける。子犬を連れた異国の婦人や、鉄棒を使って体を動かす若者が、目の前で戯れていて視界に飽きない。カマンベールと生ハムのサンドは思いのほか生地が分厚くて、ひとつ食べたらずいぶん満足できた。

腹ごなしに1駅分を歩き、旧芝離宮恩賜庭園をぐるりと回る。藤の見頃はもうしばらく先のようで、赤や白のツツジを池のほとりに眺める。

誰しも合う場所、合わない場所がある。無理に合わせようとすれば、心も体もちゃんと壊れる。だからおかしいと思ったら外の人と話したほうがいいし、確信を抱いたなら別のところに移ったほうがいい。

全部が全部環境のせいではないにしても、自分の居場所はここしかないと思い込み、自らを変えることだけに苦心するのは、あまりにも逃げ場がない。世の中は存外選択肢にあふれていて、目にしているものはそのうちのほんのちょっとに過ぎないことに、何度も何度も気づき直している。

そんな話を木陰で交わした。日が傾けば涼しくなって、昼よりいくらか過ごしやすい。