ことのあらまし

日々のあらまし、いつか平気になるための記録

2024/4/26

しばらく家を離れる同居人を寝ぼけた頭で見送り、爪を塗り直して一息。寝不足だからか、つかれが取れていないからか、コーヒーをかぱっと飲み干しても頭が回る気配がない。

家にいてもぼーっと時間が過ぎていくだけに思えて早々に家を出る。乗り継いだ電車の中でうつらうつらとしているうちに藤沢へ。スーツ姿のサラリーマンやOLの姿をよく見かけた。今日は平日だしここは観光地でもないしそれもそうか。

日陰に身を潜め、じりじりと強くなる日差しを避けながら定食屋が開くのを待つ。かつおとまぐろのたたきとブリのあら煮が、腹の底がじんとするほどおいしくて、味がまるきりわからなくなるほど弱っているわけじゃないことに安心する。

食後のコーヒーを片手に駅まで戻り、江ノ電に乗って江ノ島まで。橋を渡るには時間がやや足らず、浜辺を歩くにとどめることに。いまいちすっきり晴れない空と、白くさざなみ立つ水面の狭間を、とんびが低く飛んでいる。食べ物を奪われそうになった修学旅行生が、高い声で騒いでいる。

暑くてたまらない。こんなに気温が上がるとは思っていなかった。宿泊先の古民家に荷物を置いて、行きがけに無印で寝巻き用に買っておいた薄手の半袖シャツに着替えてひとやすみ。本日3杯目となるコーヒーを線路のすぐ脇にある小さな喫茶店でいただき、再び江ノ電に乗り込んで今度は鎌倉へ。下校中らしき4、5人の小学生が席を立っては座りを繰り返していて、車内は実ににぎやかだった。

西口から歩いて1分のカフェのテラスで友人2人と合流。これ以上ストレートにカフェインを摂るのは避けたほうがいいだろうとチャイを頼んでしばらくしゃべる。最近どう、という問いかけに待ってましたとばかりに食いついて、積もり積もっていた悩みをあふれるように話し出す。けっこうやられてたんだなと思う。

しばらくののちにもう1人もやってきて、一気に場が明るくなった。いつも弾けるように笑う彼とは数年振りにあったはずだが相変わらず元気そうで何より。4人で野菜やら海鮮やらデザートやらを買い出して宿泊地に戻る。

夕方のスーパーで友人たちと飲み物やお菓子を選んでいたら、大学時代の宅飲みの記憶が蘇って、ぎゅっと懐かしさがこみ上げた。別に大人になってからでもやろうと思えば家で飲むことくらいできるんだけど、有り余る時間の使い道のひとつだったあの頃ほどの気軽さはもうなくて、しっかりと特別な時間になっている。

祖父母の家に遊びに来たような郷愁を床の軋みや畳のにおいからめいめいがたっぷりと味わったところで鍋の支度に取り掛かる。Airbnbで借りたこの家のキッチンはじゅうぶんに広く、調理器具や食器の類で困ることもない。こたつ机の真ん中にカセットコンロを置いたらくつくつ煮込まれた鍋を囲んでいざ乾杯。

牡蠣のつるんとした歯ごたえを味わいながら銀河高原ビールをすいすい飲んでいたらちゃんと酔って慌てて水をたくさん飲んだ。ただ酔っているからこそ枷の少ない状態でとろとろと思いを口にできたところはあった。具を足そうかと話している頃に仕事終わりのもう1人もなんとか到着。運転の見合わせに運悪くぶつかってしまった彼をねぎらい、迎え入れて団欒は進む。

数年の間が空いたとて再会した途端に昨日も会ったかのようにすっと話せるのだから不思議でありがたい。おおよそすべてを話せる相手がいることを確かめられてうれしい。彼や彼女がいるならまだ大丈夫だし、案外どうとでもなる気もした。