5月2日。旅の帰り道。新幹線の出発時刻まで本八戸駅の近くをぶらつく。カフェでひと休みしようと地図アプリに示されるがまま商業ビルへ。正午過ぎだというのに薄暗い建物の中、4階に構える『Patrie』の青竹色の扉からあふれる光だけが、煌々と照ってまぶしい。
音楽好きなオーナーが営んでいるカフェ&バーとのことで、ライブのポスターや邦ロックのCD、アーティストのエッセイがそこかしこに並んでいる。BGMはandymoriやMONO NO AWARE、ミツメと来た。趣味が合うなとほくそ笑みながら、瓶に詰められたレアチーズケーキを掬った。
帰りの車内で高瀬隼子『おいしいごはんが食べられますように』を読む。果物が乗ったケーキを押しつぶすように咀嚼して喉に流し込むシーンが、まるでおいしくなさそうで印象的だった。
食事がテーマの不穏な話に触れるたび、村田沙耶香『生命式』を思い出す。影響を受けた本として真っ先に挙げるうちの一冊。と言うと、内容を知る人には訝しがられるかもしれない。