ことのあらまし

日々のあらまし、いつか平気になるための記録

2024/2/29

昨日集積所に出しておいたぬいぐるみたちは周りにあったビニール袋と一緒にきちんと姿を消していた。大学時代から引っ越しを共にしてきた彼らを手放すことにためらいが無かったわけではないが、もうじゅうぶんだとも思った。抱き枕ほどの大きさのカピバラと、バレーボールみたいに丸々とした文鳥。ありがとう、おかげで、と胸のうちに唱えて、空っぽのゴミ捨て場の前を通り過ぎる。

走ったついでに買ってきたソーセージエッグマフィンを朝食にし、アイメイクを丁寧に施す。病床に伏したのをきっかけに在宅のときは眉だけ塗って済ませるようになった分、外に出る日はちょっとばかり気合いが入る。それぞれのパーツがペンでなぞったみたいにはっきりとしていくのを眺めるのは、自分の顔でありながら絵を描くようでたのしい。

ピークの時間をずらしたわりに電車の中は混んでいた。出社がひさしぶりすぎてオフィスが何階にあるのかわからず、エレベーターを前にはたと戸惑う。案内板に目をやると誤った階を指していることがわかり、あわてて取り消して正しい番号を押し直した。

どうすれば言葉をうまく扱えるようになるんでしょう、と投げかけ、書いて読まれてあれこれ言われるのが一番だよ、と返されたのは明瞭だった。同じ世界に生きているはずなのにこうも視点や筆致が異なるものかと、驚きを手渡してくれる作品にもっと触れたい。日記にしろ短歌にしろ随筆にしろ脚本にしろ。