ことのあらまし

日々のあらまし、いつか平気になるための記録

2024/4/5

これで最後なんです、と言いながら手渡されたグレープフルーツジュースのグラスを早々に飲み干した。こんなにノンアルを頼まれるとは想像していなかったということか。しかし金夜の飲み放題である。仕方なしにQRコードを読み取り、スマホに映したメニューを押し上げ、烏龍茶とジンジャーエールを交互に頼む。周りの人たちは次々と頬を赤らめ立ち上がり、普段は話す機会を逃しているのであろう言葉をぽろぽろと、縁の欠けた発泡スチロールみたいにテーブルに落としていた。

役割や経歴といったものを脇に置き、その人自身の口から悩みやら弱音やらが発せられるのを見るとホッとする。いつもはモニターの向こうにいるこの人たちも、当たり前に実体を伴っていて、ちゃんと酔っ払うしちゃんと頭を抱えるのだ。ロボットでもアンドロイドでもなく、人は人だと理解する。