ことのあらまし

日々のあらまし、いつか平気になるための記録

2023/12/28

焼きたてのトースト2枚にマーガリンと手作りの柿ジャムを乗せて食べる。腹ごなしに30分ほど散歩。このあたりだと人よりも猫とすれ違うことのほうが多い。畑の隙間を縫うように歩いて帰ると母はキッチンに立っていた。今日は黒豆を6時間煮るらしい。隣の鍋では金柑の甘露煮が黄金色に艶めいている。

ここのバスは1時間に1本来たらいいほうで、しかも時間通りに走るかも怪しいから、ちゃんと時刻表を見て余裕をもって行くのがいいよ、と母は言い、わざわざ3路線分の時刻表を印刷してくれた。早めにお昼を済ませ、ドラッグストアの脇に立つバス停まで15分ほど歩く。ここでもモバイルSuicaは使えるんだろうかとおそるおそるスマホを乗車口の端末にかざすとピロリンと軽快な音が鳴り、残高が画面に表示された。ほっとしながら席に座ると同時に発車。

うつらうつらしているうちにもう2停ばかりで目的地に着くところまで来ていた。冬期講習の帰りか、制服姿の学生が列を成すバスセンターで降りる。サロンの予約までまだ時間があるので書店へ。ここの看板は鮮やかなオレンジ色をしていながら意外にも風景にすっと溶け込んでいて、行くたびにこの道で合っていたかと少し心配になる。細い階段をのぼって2階に上がり、金色の押し板に手を添えて扉を開け、木の本棚に囲まれたささやかな音楽が流れる空間に足を踏み入れる。

いつもより人が多く見えるのは同じように地元に帰ってきた人が来ているからなのか、はたまた常連が年末の挨拶にやってきているからなのか。同じ本があっちの棚にもこっちの棚にもちょっとずつ置いてあることに、あれ、と気がつく。どの本と隣り合っているのかとか、どの角度からどんな光の当たり方をしているのかとかで、ピンと来るものが変わる気はたしかにした。じっくりと眺めては手に取り、金川晋吾『いなくなっていない父』を買う。

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アーケードから一本外れた場所にちょこんと構えられたサロンで、ジェルネイルを剥がして爪を整えてもらう。人肌の温もりをじんわり感じているうちにまた眠たくなり、無駄に店の奥の商品コーナーにちょこちょこ目を向けるなどして凌ぐ。丸みを帯びてつやつやとした手先は心なしか軽くなったように思えた。

寝巻きを買い、ルームソックスを見て、古本屋を覗き、喫茶店へ。馴染みのないサインボードが通りの隅にちょこんと置かれてあるのが目に留まり、3階まで上がる。レコードが流れる奥行きのある空間にマスターとバーテンがいる、シックだが敷居が低く感じられる、小綺麗な店だ。ティラミスとコーヒーをいただきながら本を読んだり日記を書いたりして出先での用を終える。

夕飯に鍋を食べて風呂上がりに爪の手入れをする。オイル、ベースコート、カラー、トップコートを順に塗っていく。薄いカーキを土台にゴールドや細かいラメを端に置いてほんのり正月っぽい色味を意識。遠目だと素爪に見えるくらいさりげない方が長く楽しめるなとも思う。両親は祖父の家から引き上げてきたレコードを拭いてはプレーヤーに乗せて昭和の曲を懐かしがっていた。