ことのあらまし

日々のあらまし、いつか平気になるための記録

2023/11/28

目が重たい。泣いて寝た翌朝のまぶたってなんでこんなに腫れるんだろう。メイクと眼鏡と前髪で多少はごまかせた、ということにする。

チャイラテの上の白いふわふわってなくせますか、とダメ元で聞いてみたら、店員さんはまったく面倒がる素振りも見せず、快く答えてくれた。芯の通ったスパイスの香りがぬくもりを湛えながら寝不足に痺れた頭に行き渡る。少し陽の傾き始めた大通りには、タクシーのテールランプが赤く連なっている。

シネマート新宿で『コーポ・ア・コーポ』を観る。

振る舞いの後ろに納得できる理由を見出せると、人は人を理解したり共感を抱いたりしやすい。だからある人が今そのようになっている経緯について、説明が尽くされるほど安心して感情移入ができる。

ゆえに社会的な尺度で計ったときにどちらかといえば素行のわるい側に立つ人々のことを、物語の中では往々にして、同情を買うほど切実な背景をもつ人物として、あるいは根っから軽薄なキャラクターとして、描きがちだ。

でも現実はそうとは限らない。

アパートの隣人やコンビニの店員といった、顔や声はわかっても名前や素性が知れない人のほうが、わかる他人よりずっと多く、日々の中にすれ違う。その人たちが、自分が見ていない場所でどんな風に過ごしているのかも、見える言動の裏にどんな事情を抱えているのかも、わかる術はない。

そしてこの作品は、そんな現実に近しい。

いいかわるいかとか、なぜかどうしてかとか、わかりきることが叶わないまま、しかしただそこにある他者を、見つめる時間が持ててよかった。生きてりゃいろいろある。しんどいこともあればいいことだってある。ままならなくても日々はつづくし、ここでしか生きられなくても、ここでなら生きていける。

copo-movie.jp

ミスドを買って新宿から帰り、味噌ラーメンを食べる。もやしと玉ねぎが素朴に甘い。塀から飛び降りてきた黒猫と目が合った。