ことのあらまし

日々のあらまし、いつか平気になるための記録

2024/3/4

目覚めがよかった記憶をうっすらと喰みながら朝の支度を済ませ、ボウルやらふるいやらを並べる。チーズケーキを朝一番に焼いたならまずわるい一日にはならないだろう。クリームチーズをやわらかくなるまで練り、砂糖、溶き卵、ヨーグルト、小麦粉を順に入れてさらによく混ぜたら、型に移して湯を張ったバットと一緒に余熱を済ませておいたオーブンにおさめる。

午前のベランダは日当たりがいい。隣家の屋根にくつろぐ地域猫を見ながら日記を書く。やわらかくてあたたかい生き物が寝息を立てる様を前に言葉を編めるだなんて贅沢な話だ。読みたい本を読み進められていないことへの後ろめたさを抱きつつ、でもまあやりたいようにやればいいのだろうと、背中を熱心に舐めて毛並みを整える黒猫を見て思う。

オーブンから出したパウンド型は粗熱を取るためテーブルの脇に置いておく。茹で上がったパスタをほぐしてソースと和える作業を同居人に頼み、その間にたまごスープをつくって昼食。きのこを冷凍しておくとちょっとした具材として足せるから便利だ。かぼすの万能調味料があればたいていのものはおいしい。

15時ごろに一息ついてケーキを切り分ける。しっとりとやわらかくてナイフを温めておかないとすぐにくっついてしまう。なんとか小皿に取り分けた1切れずつを紅茶と一緒にいただく。ヨーグルトの酸味がさっぱりと爽やかでするすると食べられた。どっしりと重みのあるものも好きだけど、自分でつくるならこのくらいがいい。

納品した日記本の売れ行きがまずまずのようだと本屋さんのSNSの投稿で知る。せっかくなら然るべきところに届いてほしいし、関わる人にはいいことがあってほしい。読んでくれた方の感想を読んだ。私の幸せを願ってくれる遠くの誰かがいると思えば、地平の淵すら光って見える。